ALTEC 344A レストア 総集編


20091123 001

さて、ウチのプリメイン・モノラル・アンプのALTEC 344A。さすがはALTEC×ALTEC、A7との組み合わせでは予想もしていなかったほどのコンビネーションの良さを発揮、日々その音を耳にするたびに大きな喜びを感じさせてくれているのですが、実は…少々問題を抱えていました。昨年の11月の導入以来、片側のスピーカーからじりじりとノイズが出たり、時には急に音がフェイドアウトしてしまったりというような症状が出て、こりゃいったいどうしたもんかとずっと考えあぐねていました。どうも原因は、アンプにあるらしい。





考えてみればこの2台のアンプ。作られてからおよそ50年近い時間が経っているわけですから、そもそも“調子が悪くても当たり前”なのかもしれません。しかしこればっかりは、いつまでも放って置いても仕方がない。ここは“餅は餅屋”だというわけで、「管球王国」の編集長から頼りになる修理工房を紹介して貰い、さっそく今週からウチの344Aは“即、入院”ということに相成りました。

取り急ぎ、不具合のある該当箇所だけを修理するという方法もあるのですが、この344Aは長きに渡って手元に置いておきたい、すっかりお気に入りになってしまっているアンプ。というわけで今回は、この機会にしっかりと「完全レストア」をお願いすることにしました。既に、2台のアンプの現状をチェックして頂いたレポートが届いているのですが…蓋を開けてみると、これで今までよくマトモに音が出ていたな、というほどの“満身創痍”ぶりなのでした…。 


今回、ウチの344Aを修復するために「管球王国」の編集長に紹介して貰った工房というのは、もしかしたらご存知の方も多いかもしれませんが、小林サウンド工房というところです。昨年、和田サンがお勧めの真空管アンプをウチに持ち込んで来て下さった際に、思わずその音に涙が溢れそうになってしまった新(あたらし)先生設計の管球式プリアンプ、AKTC-1を製作したのが他でもない、この小林サウンド工房です。今回はこの工房の主宰者である小林さんにすべてをお任せしてレストア作業を進めています。

まずは小林さんからの1st リポートです。

先ほどから状態の確認のため、テスト試聴を行っています。テスト機材はソニーのSCD-1、3A5プリ、344A、グッドマン+ゴトウ SG-160BLです。344Aはグッドマン+ゴトウを力強くドライブして、気持ちの良い輪郭がはっきりした良い音を出しています。中音域の解像度と力強さが抜群ですね。帯域感にも不満はありません。ライオネル・ハンプトンの「スターダスト」の鉄琴の音が見事に力強く、しっかりした音を出しています。タンノイに繋いでみても、タンノイからこんなに硬質な強い音が出るのかと感心させられました。ボイス・オブ・ザ・シアターにピッタリのアンプですね。

今、確認できた現象は、2つです。

1.音が出なくなる(いきなりフェードアウトする)
2.チリチリ、ガサゴソと雑音がでる。

最初に電源を入れた時、NGチャンネル側のアンプは暫く音が出ていませんでした。初めて接続したので接続や操作に問題があったのかと思ったのですが、いろいろと触っている間に音が出ていました。どうやら真空管の接触や基板上の部品やハンダ付けに問題があるようです。雑音はチリチリ、ガサゴソといった音色で中高音域(3KHzから7KHz)であることが確認できました。レベルはかなり小さく不定期です。雑音の周波数からすると、高感度なA7のホーンドライバーが一番敏感に反応する帯域です。スピーカーには問題は無いと思います。真空管自体の問題が大きいと思います。プリ部の12AX7、パワー部の位相反転管6CG7、接触部(球の足、ソケットのジャック)に問題があるかも知れません。


やはり、アンプに問題あり。というわけで、さっそく小林さんが“分解調査”を始めてみたところ……

大変古い機械ですので無理も無いのですが、数々の問題点が見つかりました。    

ヴィンテージの世界。一筋縄ではいかないことは承知の上でしたが、やはり甘くはありませんでした。  



別冊ステレオサウンド「ALTEC」に掲載されている1569Aのレストア記事。ウチの344Aも今はこんな感じ?




不具合の症状のあるNG機の分解調査を開始しました。



1.電源コードのプラグは付け根でショートのおそれがあります。さらに内部で電源コードは両極のコードとも被覆のゴムが硬化してヒビが入っていて危険な状態でした。これから長期に使うのは危険です。(PSEの安全規格は問題外で通りません)また、ACアウトレットの配線およびハンダ付けが雑で危険、また変形してかなり接近しています。ACコードを交換し、ACアウトレットは再配線時に絶縁処理が必要です。

2.アンプメイン基板にクラックがあり、パターンの一部が半断線状態、ハンダ付けの数箇所にクラックや浮きがあり、温度やショックで断線状態になる事があります。時々、音がフェードアウトしてしまうのは、この半断線で初段管の電源供給が止まるためではないでしょうか。割れた基板配線の修正と、すべてのハンダ付けの修正をします。

3.基板上部にホコリや砂、泥、カビなどが球ソケット周りに付着しています。これも雑音の原因になることも考えられますので、基板の清掃、ソケットの修正、接点清掃を行います。

4.基板に繋ぎこみの錫メッキ線のハンダ不良があります。

※目視では抵抗器やカップリングコンデンサーには異常は無いようです。

片側のAMPはざっと調べた結果このようになりました。引き続き、2台目の調査を開始しました。テスト試聴で不具合は見つかりませんでしたが、中を空けてびっくりの品物でした。NG機よりさらに酷い状態です。



1.電源コードのプラグは付け根でショートのおそれがあります。電源コード自体は問題が無く、ビンテージっぽくて良いのですが、同じものにしたほうが安心なので交換します。

2.メイン基板にNGアンプよりも多くのクラックがあり、パターンの一部が半断線状態。ハンダ付けで修正した痕が何箇所もあり、信頼性が低下しています。ハンダ付けが非常に悪く、山になっていたりツララになっていたり、加熱のし過ぎで焦げている箇所が多数あります。

3.基板上部にホコリや砂、泥、カビなどが球ソケット周りに付着しています。

4.2本のEL84(6BQ5)のソケット付近が焦げて炭化状態になっています。おそらく過去にEL84に異常動作があり、オーバーフローとなり、加熱されたように思われます。基板の信頼性(強度・絶縁度)が心配です。

ビンテージ・オーディオ機器は何が起きても不思議ではないので、購入するときは十分に気をつけることと、覚悟が必要です。また、直した場所と別の場所が順番に壊れるというのが一般的です。そうならないように処置をしますが、なるべくオリジナルを尊重しなければいけないので、現時点で異常の無いものはそのままにしておきます。ただし、安全性や音質にそれほど影響しないものは交換する方針です。

安心してください。

きちんと綺麗に、あるべき姿に蘇らせます。期待していて下さい。


                                                                      
いよいよ ALTEC 344Aのレストアも、ひとつめの大きな山場を迎えたようです。


2台目の方(NGでなかったセット)から分解作業を開始し、基板の洗浄作業を始めました。基板パターンの損傷(剥離部分)の補修を錫メッキ線で行って、異常に垂れているハンダを吸引し、はみ出して汚れたフラックスを取り除く作業を行います。作業中、奥側の6BQ5のソケットの足の亀裂(断裂)を見つけましたので、補正作業を済ませました。ソケットの付け根付近ですのでハンダ付けがかなり難しい場所でしたが、無事補修できました。

そして、やはり心配していた不良ハンダがありました。ブロック型ケミカルコンデンサー(40μF450V)の+電極の配線にハンダがきちんと乗っていないのを発見、ピンセットで引っ張ると簡単に外れました。予備ハンダをしてからげただけでした。からんでいたのでとりあえず電流は流れていたのですね。ですから不安定ながらも音が出ていた訳です。

出力管6BQ5のソケット周りが焦げていたので心配していたのですが、やはり電源トランスにかなりのストレスがあり、振動を防止するピッチ(コールタールの塊)が流れ出して、リード線やシャーシ周りが汚染されていました。電源コードも危ない状態です。また驚いた事に、このアンプにはヒューズというものが無いのです。(危険ですが、そのぶん音が良いとも言えますが!)電源を入り切りする際、パチッと大きなノイズが出ます。電源のノイズ対策がされていないので、電源スイッチから発生するスパークを防止するキラーコンデンサーを取り付けます。ノイズが出なくなるのと、スイッチ自体の寿命を延ばすことができます。



修復がほぼ完了しました。

・アンプブロックのプリント基板の取り外し、プリント基板の洗浄
 電解コンデンサー、フィルムコンデンサーの取り外しとチェック(パスコンは不良交換)
・基板のハンダ取り除きとプリントパターンの補強、1ミリの錫メッキ線で補強 
 これでクラックの入った部分の補強もかねる
・基板上に残ったハンダの松やに(フラックス)をフラックス洗浄液で取り除く
・プリントパターンに亀裂やはがれが無いか入念にチェック
 この基板は上下にプリントパターンがあり、スルーホールで結ばれていて
 本来ハンダを流し込んでいるだけなのですが、信頼性を高めるためにメッキ線で上下を結合
・真空管のソケットの根元のクラックを補正 
・6BQ5のソケットに割れがあり、上部からの補強に加え下部からも補正(白いリード線を追加)
・完成したプリント基板を本体シャーシに取り付け、結線(リード)の古いものを新しい線と交換
・新しい電源コードを取り付け、2箇所のACアウトレットの絶縁性を高めるためヒシチューブをかぶせる
・電源スイッチにスパークキラーコンデンサーを取り付ける
・底板にしっかりとアースをとる(不定期な雑音源となる場合があります)
・真空管のソケット、真空管の足の清掃と曲がりなどを補正、接点の再生
・電源トランスのチェックした結果、トランスのコアを絞めている4本のねじの増し締め
 ベークスペーサーが経年劣化でぼろぼろなので金属製のスペーサーと交換 
・最後にロータリースイッチの清掃と接点復活剤の塗布、
 ボリュームのエスカッション(真鍮のかざり)の清掃磨き、つまみの清掃


各ブロックの電圧測定を開始、不穏な電圧の動きを見つけ調べなおした結果、最前段のイコライザーアンプ部の12AX7Aのプレートにかかる+Bのパターンに半断線が見つかり、再度裏側から金メッキのバーで4箇所、配線の追加をし、万全を期しました。また中途半端は嫌いなので、基板に向かうリード線は全部入れ変え、スッキリ綺麗になりました。(アウトプットトランスからのリード線は交換ができないので6BQ5のプレートに向かう紫と茶の線はそのままです)



おぉ!“カルテット”の愛称の所以となっている、縦に並ぶ4つの独立ボリュームが磨き上げられて金色の光を放っている。アンプ内部は言うに及ばず、ボディまでもがすっかり見違えるようになっているではないか!


既にレポートしている2号機と同じ手順で、NG側のアンプもレストアが完了しています。



引き続き、2号機の各部の電圧チェックとエージングを(ダミーロードで)行いました。各部の電圧チェック中、パワーアンプ段の前段-位相反転(アルティク型位相反転)回路の6CG7(6FQ7)の電圧がふらふらする現象を発見、球自体の問題かと思い、何本か変えてみたのですが現象は変わらず、前段のプレート抵抗A&Bの100KΩ1Wが怪しかったのでこれを外してみて抵抗値を測定した結果、やはり抵抗値がふらつくのと値自体が大幅に変化(劣化?)していました。

2号機の100KΩ⇒90KΩ~92KΩでふらつき、NGアンプ側の100KΩ⇒93KΩ。また2号機は前段-位相反転段ともB電圧がNGアンプ側よりも35V~40V低い。これは電源回路の電解コンデンサーの容量低下が原因だと判断し、10μF450Vを平行に抱かせてチェックしたところ、予想通り電圧は上昇し、NG側アンプとほぼ同じプレート電圧になりました。

これでだいたいパワーアンプ段の調整テストは済みましたので、続いてプリ段のチェックを試聴テストをしながら行います。案外「カサカサ、ゴソゴソ」ノイズはプリ段の12AX7が原因している事が多いのです。




このアンプは100Vでそのままお使いですか?117Vのステップアップトランスをお使いですか?

※ゆくゆくは117V駆動で、と考えていますが 今現在はひとまず100Vで対応しています。

344Aは規格では20Wとなっています。まだ出力特性のチェックはしていませんが、2割弱各部の電圧が低くなっているので、おそらく20Wは出ていないと思われます。117Vで使用するときは6BQ5(EL84)のPP動作では20Wは危険なので、この球のシリーズのワンランク上の7189や7189Aが必要です。(現物のアンプにはジーメンスのEL84Lという上位規格の球が使用されているので安心ですが!)誤って117Vで6BQ5を使用すると、定格オーバーで早期に球がいかれてしまいますので要注意です。たぶん基板が焦げているアンプの方は、そのような使い方をされたのでしょう。100Vでの使用は問題ないと思います。

トランスで117Vにして使うか、トランス無しで使うかは迷うところです。ただし本来はこのアンプの場合、ヒーター電圧は6.3Vですが、100Vで使用した場合は≒5.2Vで、電子を飛ばす効率が悪くなっています。やはり本来の性能を出す場合は良いトランスで117Vに上げて使うべきでしょう。



週が明けて、小林サウンド工房の小林さんから344Aのレストアレポートが届きました。いよいよ最終章、という感じですね。途中、かなり専門的な記述も頻繁に登場していますが、せっかくですので原文のまま採録しておきたいと思います。おそらく通常ならあまり表には出てこないものですので、貴重なレポートだと思います。

週末に少しだけ時間をつくって作業を行い、月曜日1日かけて追い込み作業をしました。今現在、電源ONでエージングをしていますが異常は出ていません。出来上がった2台を並べて電圧チェックを行い、差異が無い事が確認できましたので試聴に入りました。

●使用機器
CDP:SONY SCD-1 MARANTZ SA-13S2
PRE:当工房AKTC-1(ALTEC 344A X2 リファレンス機 当工房46/VT63PPmono X2)
SP: TANNOY STiRLiNG
サウンドチェックCD:KEITH JARRETT TRIO STILL LIVE
 HAENDEL チェンバロのための8つの組曲第1番~8番 チェンバロ スコットロス
 MOZART ピアノソナタ第3番 第1番 ピアノ クラウディオ・アラウ
 EMI CLASSICS Festival2004 No1,No2
エージングCD:MOZART ヴァイオリン協奏曲 キドン・クレーメール
        BACH 無伴奏チェロ組曲 アンナー・ビルスマ
        BACH 平均律クラビーア曲集1巻2巻 グスタフ・レオンハルト


●今回の修理のポイント         

※説明上 NGだった344Aを1号機としておきます。

・外観で左右のインジケーターの明るさと光りの感じが違う。暗く汚れた感じでぼけている(2号機)
・片側のアンプからハムノイズが聞こえる。
 スピーカーの近くに行かないとわからない位のレベル(2号機)
 1号機はスピーカーに耳をつけてわずかに感じられるレベル。
・CDを再生して3時間位たった時点で1号機からカサカサというノイズが聞かれた。
  これはスピーカーに耳をつけてやっと聞き取れる音量でかなり不定期。

以上、3つの新たな問題が見つかりました。

●問題の対処と考察

◆ネオン管
ALTEC344Aのインジケーターに使われているランプの種類ですが、ネオンランプが使われています。POWER ONのインジケーターに良くネオンランプが使われますが、インプットセレクターに連動のネオンランプは非常にめずらしい。しかもこのランプはスタンバイ機能も持っていて+B電源が立ち上がるまで点灯しない優れものです。このアンプに採用されている6CA4/EZ81のヒーターウォームアップタイムが15秒から20秒位なので、スタンバイ期間で点灯しない時間と約17秒と一致しています。使われているネオン管は真空管試験機によく使われているGEのNE-15というタイプで、一般のアンプに使われるのは珍しい。この時代は6.3Vで5W~6W位のタングステンランプを使用するのが普通だったのですが、長寿命で信頼性の高いネオンタイプを採用したのは、業務用機器に長い歴史があるALTECならではの選択と思われます。

インジケーターの光の感じが違ったのは、ランプの光が横から漏れるのを防ぐシェードが代用品で機能していないのと、ランプの表面の汚れで減光があった為です。対処として耐熱性(105℃)の高い寺岡のアセテートクロステープで代用品を作りました。また、念のため使用頻度の低いRADIOポジションとTAPEポジションを入れ替えました。

◆ハム雑音
344Aに使われている真空管はイコライザー・マイクアンプに12AX7、トーンコントロール&フラットアンプに12AX7、位相反転に6CG7/6FQ7、電力増幅段に6BQ5/EL84、整流管に6CA4/EZ81という構成になっています。このアンプではこれらの真空管をすべて6.3Vで動作させて、トランスのヒーター巻き線を1回路としてコストダウンを図っています。そのため、通常はヒーターハムを低減するためにヒーター巻き線に中点タップを設け、そこをアースに落としてハムキャンセルを行いますが、344Aはハムバランサーを使い、より細かなポイントを探せるようにしているようです。しかも、プリメインアンプで高感度なMIC部やRIAAイコライザーまで、AC点火6.3Vでやってのけている。それにしては驚くくらい、ハムが少ない。ハムキャンセルの機能として、100オームのハムバランサーが大きな働きをしているに違いない。残留雑音の実測では1.6mVとなっていますが、これはプリアンプ部も通しての値ですので、パワー部のみでの測定はおそらく0.5mV位ではないかと思われます。

2号機は先にも記しましたが、何らかの事故でトランスが加熱してトランスの充填材のタールが吹き出ていたり、6BQ5ソケット付近が焦げていたりと、かなり悲惨な状況で、さらに以前交換されたハムバランサーに大きな問題がありました。一般にヒーターのハムバランサーとしては2.5Vの場合が50Ωのボリューム、6.3Vの場合100Ωのボリュームが使われます。しかし以前の修理のときに使われたものが、243Ωの固定抵抗2本と25Ωのボリュームです。直列のインピーダンスは243X2+25=511Ωとなりますので、ハムバランスに有効な抵抗部分は約5%に過ぎません。これではハムキャンセルの効果は期待できません。


今回の修理では、バイオレットの巻き線1.5W型で信頼性の高いボリュームを使用しました。センターのアースも1号機と同じ様、シャーシ上に直接落とし直しました。これにより残留雑音は半分になりました。このハムバランサーの回路を見て気がついたのですが、当然ハムバランサーの中点はアースに落とされるわけですから、整流管6CA4/EZ81のヒーターの片側が殆どアースに落ちているのも同然なのです。ヒーターの外側にあるカソードとの間に+Bの高圧がかかる訳です。AC100Vで駆動した場合は、ヒーター・カソード間にはなんと351Vのも電圧がかかっているのです。しかし、6CA4/EZ8のヒーター・カソード間の耐圧は500Vもあります。ちなみに6CG7/6FQ7や12AX7などは200Vまでです。また、比較的小型の整流管にもかかわらず、入力平滑コンデンサー容量が50μFと大きく、リップルの少ない電源が作れますので、チョークを使っていない本機には好都合です。なぜかALTECのアンプにはチョークトランスが使われてないセットがよくありますが、十分な性能と音質をもっています。

●残留雑音の計測
対策前のレベル
         1号機(NG):1.65mV               2号機:3.2mV

対策後のレベル (ハムバランサー交換・アースポイントの取り直し)
         1号機(NG):1.64mV               2号機:1.67mV

◆カサカサ音
1号機のカサカサノイズについては再現性に乏しく、非常に小さい音なので聞き過ごしてしまいそうですが、とりあえず一番怪しいと睨んだトーンコントロール・フラットアンプ部の12AX7Aと、LINE系では使用しない部分のイコライザーアンプの12AX7とを交換したところ、3時間経過した今もノイズの症状は発生していません。おそらくトーンコントロール・フラットアンプ部に使われていたRCAの12AX7Aにノイズがあるのでは、と思われます。

とりあえずLPやMICを使わない時はこの状態で良し、ということでさらに試聴を続けます。

チェンバロやチェロの独奏では、楽器そのものの生々しく、きめの細かい精度の高い音が楽しめた。クラウディオ・アラウのピアノではピアノの大きさを感じさせる、スケールの大きな低音と高精細な高音が気持ち良くバランスしている。最近リファレンスにしている直熱管46/VT63PPのアンプと比較しても、勝るとも劣らない。しいて言えば46では部屋の空気を軽く優しく振動させているような独特な空気感がただようが、344Aは音の先鋭度、中音域の力強さ、低域の抜けの良さが感じられる。映像で言えばシャープネスをいっぱい上げたかのような先鋭度があるが、半導体アンプのようなきつい感じは無い。好感が持てる音づくりだ。

暫く監視して問題がなければ、簡単なスペックを調べて最終試聴を行い、晴れてアンプはご返却となります。

おそらく27日頃には発送できそうです



さて、最終段階に入り いよいよ測定器の登場となりました。

測定風景

音が良ければそれで良しなのですが、ついつい職業病が出てしまい、いやな現象(問題)を見てしまいました。どこまで追い込めるかはわかりませんが、出荷が遅れる事になりそうです。

1号機2号機の物理的な特性は殆ど似たようなものです。

たとえば

出力特性(無歪最大出力)
AC100V時  1KHz
1号機   Vcc=10.5V W=10.5X10.5/8Ω≒13.78W
2号機   Vcc=10.5V W=10.5X10.5/8Ω≒13.78W

AC117V時  1KHz
1号機   Vcc=12.8V W=12.8X12.8/8Ω≒20.48W
2号機   Vcc=12.8V W=12.8X12.8/8Ω≒20.48W

となりました。殆ど同じ出力が出ています。しかし、問題は周波数特性と感度の違いにあります。

周波数特性  AC117V Vcc=2.82V≒1W(8Ω)このときのTHDは0.1%以下 
1号機   20Hz~10KHz(±3dB)
2号機   20Hz~20KHz(±3dB)

1号機と2号機の感度差が6dB位あります。増幅度とF特性がともに違う・・・・・・NFB回路が怪しい?

・・・・・・ということでもう少し時間が必要になりました。



まず結論から申し上げると、両方のアンプに使われている可変抵抗器(ボリュウーム)の、おそらく経年変化によるばらつきで大幅に狂っていた事が主原因とつきとめました。そのため入力感度が違い、周波数特性も狂い、周波数特性にうねりがあります。(これは344A独特な音作りなのか?)先にもお知らせしたように、パワーアンプ部は非常にフラットな特性をもっています。アルテック位相反転の初段6CG7のグリットに直接入力したときのデーターはほぼ同じ特性でした。機会があればプリとメインをセパレートできるように加工しても良いかもしれません。ネ!

実測データ
ボリュームの値     SPARE   TAPE   RADIO   BASS   TREBLE
1号機(NG)      211KΩ   215KΩ  38.3KΩ  285KΩ 860KΩ
2号機         175KΩ   182KΩ  199KΩ   266KΩ 1066KΩ

1号機のRADIO入力の38.3KΩは意図的に感度を下げるために、ボリュームに47KΩがパラレルに接続されていました。全体のバランスを合わせる為に取り外しました。結果、198KΩに戻りました。本来ならボリュームはバラツキをなくす為に交換した方がベストですが、高価なA&Bのボリュームを探し、交換するのは大変難しいと思います。もともとA&Bのボリュームは音質や温度特性は優れてはいるものの、抵抗値のバラツキが半端じゃなくひどいです。

そんなわけでこのくせを残したままうまく使いこなすには、両機ボリュームは音量上昇カーブがかなり違いますので、耳で左右のバランスを確認して合わせると良いでしょう。ボリュームの位置はあまり当てになりません。しかし、こういったような機械の癖を知ってうまく使いこなすのも、ビンテージの醍醐味ではないでしょうか。あと最後にAC117V電源ですが、スライダックで117Vに上げて試聴しましたが、がぜん音の抜けが良くなり、低域に力が加わった感じがしました。おすすめです。

このアンプは、このアンプにしか出せない魅力的なものを持っていますので、スペックを気にしないで大事に扱ってあげてください。また、アンプと一緒にお預かりしていましたウッドケースも塗料の剥がれ、擦り傷、ゴム足の跡などちょっと気になったので油性ウレタン系のカラーニスで補修しています。完成時にその姿をご覧ください。



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